「卒業、やなぁ」
顔を空の方に向けて、いっちゃんが言う。
息を吸い込んで、のどぼとけが動く。
「…卒業、ですねぇ」
「…はやい、なぁ」
「……はやい、ですねぇ」
「マネせんといてか。」
「ふふ……ってか、やっぱりあったかいなぁ。いっちゃんの手」
「そうか?みともが冷たすぎんねん」
「えー?ま、ええけど。いっちゃんのあったかいのん吸いとるから」
「やらんし」
「勝手に吸うし」
「「「そこのおっふたっりさ〜んっ!!」」」
─ぱしゃっ。
元気な声がして振り返ったら…向こうにカメラを高くかかげて、ニィって笑うアヤちんの姿。
…プラス、アヤちんのかげからぬーって顔出して、ニヤニヤしながらこっち見てるさっぺとまみん。
右。左。
ぶんぶん手を振るから、アヤちんの振り袖がふりこみたいに揺れてる。
「見返り美人、ツーショットゲーット!!」
「ははっ見返り美人て、俺もかいなそれ!」
いっちゃんが笑う。
すぐななめ上から、いっちゃんの低い声がふる。
握り合った手から、あったかい、体温が流れてくる。