─体育館から少し離れて、購買の正面のベンチの前。



今朝、あそこらへんで待っとるな〜って待ち合わせに指定されたそこには、いっちゃんがすでにおった。


待ち合わせ、な。

いっちゃんがみともの袴姿見たいから、どっかで落ち合おうってゆうてくれてん。


待ち合わせしとかんと、人多いし、出会えへんかもしれんから。



いっちゃんはスーツ姿に、ぴしっとしめられたネクタイ。


ネクタイだけ、卒業式用にええの買っとったんかな。

見たことないやつや。



カコン、カコン、てゲタを鳴らしながら近づく。




「みとも」



ウチに気がついたいっちゃんの顔に、笑みが広がった。



「ごめんな、おまたせっ!」



…今日だけやない。



待ち合わせはいつやって、いっちゃんの方が着くの早かったなぁ。


同棲してからは家一緒に出るし、あんま待ち合わせっぽいことしてへんかったけど。



「…うーわー。袴とか着てもうてるやんみとも」

「そ…卒業式やから当たり前やろっ!しかも着つけ行くって知ってたくせにいっちゃん!!」

「知ってたけど見たんは今が初めてやもん」