…なあ、もし。
距離が遠くなって、でもいっちゃんのそばに、いっちゃんを「好き」っていう子が現れたら?
ウチと同じように、「いっちゃんを好きになってくれる」子ができたら?
いっちゃんがウチを好きになってくれたんは、ウチが先にいっちゃんを好きになったから、なんやろ?
じゃあまたウチやないだれかでおんなじことが起きるかもしれへんのやろ?
でも、ウチ決めてん。
おかあさんのそばにおるって。
おりたいって。やないと、絶対後悔するって。
…どうしたらええの。
どうするんが一番ええの?
だってなぁ、どっちも大事なんやもん。
…どっちもめちゃめちゃ大事で、だいすきやねんもん。
「いっちゃん…、」
「───はい。」
…泣きながらにじんだ声で呼んだそれに、あるはずのない返事があった。
振り返ったら、いっちゃんがおって。
びっくりして。息を呑むのもうまくできんくて。
ヒクって。のどが変な音たてる。