───息がつまる。
言葉が口から出る前に、死んでしまう。
こっちにのびてきたいっちゃんの手を払って、立ちあがった。
「〜みとも……っ!?」
後ろ手で、たたきつけるみたいに思いっきりドアを閉める。
もう、ごちゃごちゃやった。
わけわからんくなってた。
気が付いたら走り出してた。
マンション飛び出して。
なんも持たんと、家着のまんまで。
─真っ暗な、夜の道。
静まり返って、車も自転車もいっこも走ってない道路。
なんや走りにくいって思ったら、右足と左足、両方それぞれ違う種類のくつはいてきてしもてた。
走るたびにばっこばっこ、かっこわるい音がついてくる。
もう息がしんどい。
ホンマ体力ないなぁ、ウチ。
この年でな。おばあちゃんのが元気な人おるでな。
…あ、ファミレスのドリンクバーの割引券、忘れた。
それ以前に財布すらないし。
…あーあ。
かっこわるいなぁ、ウチ。
まるっきりすっぴんやし。眉毛ないし。
…行くとこ、どこにもあらへんやん。