なんかゆうて、いっちゃん。



うそ、まだ言わんで。



もうちょっと待って。



心が落ち着くまで、もうちょっと───









「まっ、大丈夫やろ〜」








覚悟してたのに、降ってったのは。




…真剣な場には合わへん、めちゃめちゃのんきな声で。






えっ、ていう声も、出せへんかった。


見上げたいっちゃんの顔は、いつもの…ただいつものお風呂上がりの、いっちゃんの顔で。



なんとかなるって。

いっちゃんはそう言ってニカッと笑うと、そのまま立ちあがってうーん!て背伸びをする。


ベッドに腰掛けたいっちゃんと、床にへたりこんだままのウチ。



…背中の向こうで、テレビ放送の音だけがする。



「あ、みとも。みともの好きなやつ始まったで」

「………」

「……みとも?」




なんで…?




明るいいっちゃんの声が、心ん中にずっぷり、つきささる。



なんで。


なんでそんな普通なん?

なんで普通に笑ってるん?


…大丈夫。


……大丈夫?


なぁ、何が大丈夫なん?

なにが、なんとかなる、なん?