声がふるえる。
いっちゃんが、ウチの手をぎゅって握ってくれる。
…だいじょうぶ。
ひとつ息をのんでから、ゆっくりと言葉を吐いた。
「いっちゃん。ウチ……あの…しゅう……あの、な。」
「………」
「…就職……地元で、しようって。思ってる…ねんか。」
「………」
「おかあさんのそばにおりたいなって、思う。やから…そしたら、遠距離になってまうねん…けど、」
──けど。
そのあとの言葉が、うまく続かんかった。
─けど、ウチは変わらずいっちゃんのこと好きやし。
─けど、これからも付き合っていきたいなって思てるし。
─けど、ウチらは続いて行けるんかな。
将来を考えていけるんかな。
けど。でも。…やから。
距離がはなれたら、はなれてまうから…ふたりの形は、変わってしまうんかな。
現実的に考えたら、いっちゃんは一般企業で。
ウチは看護師で。
仕事の時間もあわへん。
電話するのすら難しいかもしれへん。
声さえも、聞けんくなるかもしらん。
…はなれるって、そういうこと。