「ただいまぁ」
…いっちゃんが帰ってきた時間は、今日もめっちゃ遅かった。
いっちゃんの服はやっぱりスパイスっぽい匂いがして。
ずっと働いて疲れてるはずやのに、やっぱりいっちゃんはしんどさを全然感じさせへん、笑顔やって。
「あれ。起きとったんや!みとも」
いっちゃんの手が、ウチの頭をくしゃってする。
「今日遅なるから寝といてええで〜ゆうたのに…なに、もしかして待っとってくれたん?」
「…うん。」
こっくりうなずいたら、いっちゃんの顔がめっちゃ嬉しそうにほころんで。
「なーんよ、うれしいやんか。…もーこのまま押し倒してええ?みぃちゃん」
「…アホ」
「ははっ、うそやって!風呂入ってくるわ」
いっちゃんは靴を脱ぎ捨てたその足で、すぐにお風呂場へ向かった。
いっちゃんの手の竜巻のせいで、ぐちゃぐちゃんなった髪の毛をなでる。
ぱしゃ、てお湯がいっちゃんを受け入れる音がする。
うるさい鼓動を押さえ込むように、深く息をはく。
いっちゃんが、上がってきたら。
…そしたら、今日こそちゃんと話す。