好きになったんやなくて、ウチが先に、いっちゃんを好きになったから。
じゃあそれって、もしウチが好きって言ってなかったとしたら。
伝えてなかったとしたら、いっちゃんは──────。
「またお越しくださいませ〜!!」
お会計は、いっちゃんが全額払ってくれた。
バイトでがっつり稼いどるからおれのおごり〜って。
ドリンクバーの割引きチケットを二枚もらって、ファミレスを出る。
肌を包む空気が、こもったぬるい空気から一気に新鮮な空気に変わる。
チケットを財布にしまいながら、前を歩くいっちゃんのおっきい背中。
…開いていく距離。
目を細めて見つめながら、思った。
…なぁ、いっちゃん。
いっちゃん、ほんまにほんまにウチのこと、すき?
ウチがいっちゃんを好きやから。
“彼女”になったから好き、なんやなくて?