言えんくて。
言わんと、でも言えへん。
その繰り返しで。
いやなこと後回しにしてしまうんは、ウチのダメなくせや。
でもいっちゃんにどんな反応されるかって思たら…めっちゃ、怖かってん。
「みとも!みとも!」
ふと我にかえったら、いっちゃんが口パクでなんか言うてる。
「へ?なに、いっちゃん」
「となり、となり!」
いっちゃんが指さすとおり、隣のテーブルに目を向ける。
そのテーブルは家族連れで。
幼稚園くらいの子と、めっちゃちっちゃい赤ちゃんがお母さんの膝に抱かれてた。
クマのまぁるい耳がついたフードの洋服着せられてる。
「うわっ、めっちゃ可愛い!!」
…思わずおっきい声出してもて、あわてて口ふさいだ。
「なぁ!何歳くらいやろ?ってか、何カ月か」
「女の子かな〜?」
「うそ、男やろ」
「え〜?だってクマちゃんやで?」
「赤ん坊んトキはかわええの着せるやん、男でも」
「ん〜…」
「俺、子どもできたらピカチューとかめっちゃ着せたいもん」
「ふっ、ピカチューなんや!!」