…おかあさん。
せやったら今、ウチはおかあさんの手を握ってあげたい。
おっきくなった手で、あっためてあげたい。
おかあさんがウチに元気をくれたみたいに、笑顔をいっぱいあげたい。
おいしいコーヒー入れてあげたい。あったかいココアも。
肩もみしてあげたい。
頭皮マッサージしてあげたい。
話を、たくさん聞いてあげたい。
昔の話も、弱音も、グチも、なんだって。
…なぁ、ウチ。
おかあさんのそばにおってあげたいよ。
ううん、ちゃう。おってあげたいんやなくて、ウチがおりたいねんか。
おっきい涙のつぶが頬に触れる間もなく、地面へと落ちていく。
今はもう、道端で泣いたって肩車してもらわんくても、涙をふいて自分で立てるから。
立って、歩いていけるから。
自分で歩くだけやなくて…自分より小さい手をにぎって、一緒に歩いて行けるはずやから。
『だってずっと一緒におるやろ?』
…いっちゃんの声が、ずうっとにじんで、聞こえた気がした。