にこって笑ったその女の人。
子供がぎゅーって、その人の服にしがみつく。
「ゆうくん、痛かったなぁ〜!」
「ふ…ママ…っ、」
「痛かったけど、ゆうくんは我慢できる子やんな。ママ、強いゆうくん大好きやで?…もう泣かへん?」
「…うん。なか、へん」
「よっしゃ!!」
…ああ、この人。
この子のおかあさんや。
ニカッて、太陽みたいな笑顔。
だれかに似とる、まぶしい笑い顔。
その人は子供を軽々と背負いあげて、肩に乗せた。
かたぐるま。
去って行くそのふたりの影はひとつづきになって。
ゆっくり歩く、巨人みたいに見えて。
笑い声が聞こえる。
さっきの涙がカラっとかわいて、笑顔に変わってる。
そん時。
ふと、思い出してん。
…あ。あれ、ウチもしてもろたこと、ある。って。
めっちゃ昔。
家族ででかけてて、おでかけが嬉しくて、ウチはおとうさんとおかあさんの先を走ってて。
そしたら…見事にごちーん!て、こけてんな。