黙ったら、いっちゃんの手が、つかんでた腕から手のひらにすべり下りてきた。


ぎゅって握られる。


指はそんな長くないねんけど、手のひらがおっきい、いっちゃんの手。



「……いっちゃん、」



名前を呼んだ自分の声が思ったよりもずっとたよりなくて、驚いた。



「…なんかな、」

「うん」

「なんか……びっくり、した」



びっくりした。


話し出したら、中からどんどん溢れるみたいに言葉が出てきて。



「だってな、いきなり……いきなり、おかあさんおらんなったとか、リストラとか、充電器、わからんとか……っ、」

「…………」

「おかあさん、今までどんな怒っても、出ていったこととか、なくって……、」



ほんまは怒りたかったんやない。

どなりたかったんやない。


びっくりして、不安になって。どうしたらええかわからんくて。



「ちっちゃいころって家族って絶対的なもの、てゆうかな。」

「……」

「絶対当たり前のもんやって。壊れないものやって思てたしな。…なんか、何言うてるか自分でもわからんけど…」