「そろそろかなぁと思っておったよ」

「おじいちゃん!」

そこには、私がおじいちゃんと呼ばせてもらっている、お寺の住職さんがいた。

「おぉ。また大きくなって」

そう言いながら頭を撫でる。

大きく、そして、少し皮の硬くなった手で撫でられ、私は無性に安心する。

「もうそんなに身長伸びてないですよぉ」

「そうだったかい?」

そんな事を言いながら見せる笑顔に、私は癒される。

昨日から私を苦しめていた黒い感情が和らぎ、心が軽くなったことが分かる。

いつもの自分に戻れそうな気がしてホッと胸をなでおろした。

「お話。聞かせてください」

「ん?」

「パパとママの」

「じゃあ。ばあちゃんにお茶でも入れてもらうか」

そう言って、お寺へと向かう。

誰もいないはずなのに、誰かに呼ばれた気がして、振り向くとそこには母のお墓があった。