「えーっと、“さくらの”さんだよね?」
「あ、“おうの”なんです」
よく間違えられるよね、この名字。
「あら、ごめんなさい!」
悪気はないのは分かるさ。
「いえ!仕方ないですよ」
にしても、外車様以外の車なんて、凄く久しぶり!
って言えるわけもない。
「桜野さん頭いいし美人だし、男性が黙ってはおけれないでしょう?」
人生で何度この言葉を言われれば済むんだろう。
お世辞を言われてもね。
「いえ!全くですよ!」
「近頃の男の子はシャイなのね」
クスリと笑うしほちゃんママ。
「あははは」
苦笑いしかできぬ。
「彼氏はいるの?」
みーんな同じ質問。
疲れる疲れる疲れる。
「いませんよ」
嘘つくべし。
「そうなの〜。あ、着きましたよ」
外を見ると、ご立派な建物。
「ありがとうございます」
「いえいえ。こちらこそよ!礼ができてよかったわ」
そういって、車を走らせたしほちゃんママ。
あ、これも久しぶりにまともなお母さんと話したな。
教室かぁ……。アリもんから叱られそう……。
憂鬱だが、一生懸命歩くことにした。