今いる、このお店。“300円で取り放題☆”という看板がたっている。
が、その看板も運がよければ修正し、運が悪ければ店ごと締めることになるだろう。
「に、兄ちゃん!もうその辺でいいんじゃない?!」
「うわっ、スッゲー」
焦るおじちゃんの声に、まだ小学生か幼稚園くらいの男の子の声。
その言葉を発する気持ち、分かるよ。
だって、雷斗の持っているお椀には、ざっと三十匹の金魚がうようよしてるもん。
「やべっ、これハマる」
本人曰く、ハマったらしい。
あ、私?一匹とれて二匹目とろうとしたら、破れましたよ。そりゃあ、もう残酷に。
「兄ちゃーん。申し訳ないんだけど、持ち帰りは三匹でいいかな?」
涙目でいう、おじちゃん。
三十匹、もしくはそれ以上の金魚がなくなれば、売上が下がり、赤字決定だろう。
ここで、雷斗が断れば、正真正銘の悪魔に認定さしあげますよ。
「いいですよ」
「え?ホント?!兄ちゃんサイコーだ!」
「優し〜い!しかも、格好いいし!彼氏だったら最高〜」
よかったよ。悪魔じゃなくて。
おじちゃんも嬉しそうだし。
雷斗も格好いいって言われてるし。
………ん?格好いい?
女ぁぁぁ?!
女だよね?!いや、女しか有り得ない!
なんか、ムカつく。
私って、こんなに嫉妬する人間だった?