−雷斗Side−

今日は一段と疲れた。

まさか、武田(タケダ)に会うとは思いもしなかった。

別に、あいつと最初から仲悪かった訳ではない。

寧ろ、仲良かった。

あの事件がおきるまでは。


俺のせいで、真麻を危険な目にあわすわけにはいかねぇ。

あの時、俺が“誤解だ”と言えばよかったのに。

めんどくせぇことになったな。


「どうした、雷斗。何かあったのか?」

今は車の中。

寝てる真麻を、ずっと待っとけといわれても、いつ起きるかも分かんねぇし。

だから、真田を呼んだ。

「あぁ。ちょっとな」

「その顔は男関係か」

こいつには、何でも見抜かされるな。

「めんどくせぇことになった」

「ふっ、お前は仮にも暁の人間だ。名を汚すようなことをしては取り戻しがつかねぇぞ」

「んなこと分かってる」

生まれてくるのに、家系や人は選べない。

それに、起きたことに後悔してもキリがない。

俺が今やれるべきことは、真麻を守ること……だろう。