「……片付いた…」

息切れ一つしないのはいつもの事。
焦った事も困った事も何もない私の日常。

「ひ…ぐぁ…」

「ァ…ァ…」

私を取り囲んでいた男達が私の足元に転がって呻き声を上げている。
涙や血や鼻水が止めようにない程に流れ出ている。
私はその液体だらけの道を歩き、表通りに出た。
家へと帰るために。


私は学校に徒歩で通っている。自転車もいいが、ああいう絡んで来る輩がいるのであまり自分の手持ちを増やしたくない。
私はいつものように飾り気のない鍵をバックから取り出し、ガチャリと開けた。
玄関は薄暗い。だが、奥の方から光が漏れていた。
この時間、母はいつも昼寝をしているはずだった。私は不思議に思い、明かりが溢れる居の間へと足を踏み入れた。
そこには驚くべき光景が映し出されていた。


「雫!」

母が少し弾んだ声を上げた。母が楽しそうにしている時に良い事なんか起こるはずがない。
私の眉間に少し皺が寄った。
母はそんな私に構わずニコニコとしている。

(…気持ち悪い)

正直、母がこんな風に自分に笑いかけて来るなんて絶対にありえない事だと思う。
私という人間を高値で売れたというのならば納得もいくのだが。
そんな風に私が思っていると、私は視界にさらにもっと過激でありえないものを目にしてしまった。


「…誰?その子…」