慶・・


「でもよ…世間から天才って思われちまったら、もうその道を行くしかねぇじゃん?テメェはギター弾くことを選んだんだから…」


慶はニッと笑い、タバコをくわえた。




「だからお前も“歌姫”になったんだから、歌い続けるって決めた以上‥その道を行くしかねぇんじゃねえの?」

「………!」

「歌姫だからって、葛藤があったっていいんだよ。プレッシャーがあったっていいんだよ。お前にはファンとかスタッフとか紅ちゃんとか健二とか…俺がいるだろ?」

「…う‥ん。」

「弱音吐いたって泣いたっていいんだよ…お前は一人で“歌姫”なわけじゃねぇんだから…」

「ぅ…ん」


涙がこぼれた。


ずっと我慢してたものが、一気に溢れ出す。

慶は何も言わずに、タバコを片手に私の手をひいて歩き出した。




なんだ…

私、泣いたっていいんだ。

弱音吐いたっていいんだ。


そうだよね。

みんないるもんね……



恋愛経験0だって…関係ないよね。