「…うん。そん時は毎日なんもしなかった。ただぼーっとして過ごしてたかな…」

「そう……」


慶‥つらかったろうな……




「でも、ある日…めちゃめちゃギター弾きたくなって・・1日中朝から晩まで弾いたな。指が擦り切れるかと思った(笑)」


タバコを挟んでいる指を見る慶。




「…それで・・どうなった?」

「なんか吹っ切れて…どんどん曲作ったり、仕事復帰したよ。『俺にはこれしかねぇんだ』って思った…」




慶が言った言葉が胸に突き刺さる。





『俺にはこれしかねぇんだ』


私にも…“歌”しかない。

それはわかってる…
わかってたはずなのに・・



「俺らみたいにテレビに出る仕事の連中はさ、夢を売るのが仕事なわけじゃん?世間からしたら俺らは非現実的で、現実にはいねぇんだよ…」


慶は続けた。



「どんなに売れてたって俺らだって人間なんだ。“歌姫”とか“天才”とか関係ねぇよ…」