観覧車を2人が降りると閉園を知らせる音楽が国内に響いた。


「帰るか」


輝好の言葉に神流はゆっくり頷いた。


「ありがとう」


アスファルトの上を、長くなった影を引きつれながら肩を並べ歩いていると、神流がふいに言った。


「今日のことか?俺も楽しか「違うよ」


輝好の言葉を神流は遮った。


「ちゃんと返事をしてくれたこと。観覧車に乗っている間の15分は鷹須賀君、私のことを考えてくれてたでしょ?それが嬉しかった」


「あぁ・・・」


輝好はなんて返せばいいか分からなかった。


たいした会話もできず、別れだけが迫ってくる。


ゲートをくぐりぬけると2人は背を向け左右、それぞれの自宅の方向へ進んだ。


輝好は振り返ると神流の背中に向かって少し大きめの声で言った。





「嫌いじゃなかった」





神流は立ち止まると、振り返らずに消えそうな声で呟いた。





「バイバイ」





その声が輝好に届いたかは定かではない。