日が傾き、茜色の空が辺りを包む。


曇り空だったのが嘘のようだ。


2人は一周15分もかかる巨大観覧車のゴンドラの中にいた。


輝好と神流は小さくなっていく人々を指差し笑い合った。


「今日はありがとう」


神流は輝好に礼を言った。


「私ね、夢があったの」


「夢?」


景色に目をやったまま神流は続けた。


「夢っていうか憧れかな?恋愛の」


神流は外を見ながら微笑んだ。


「出会いは自分のクラス。私の好きになった人は部活に入ってるんだけど、私は差し入れを持っていくこともできずに、そっと陰から見てるの。


 優しい人でね。そんな私の存在に気付いた彼は言うの。


 『部活見に来たら?』って。


 それがきっかけで仲良くなって、デートを何回もして、自分に自信がもてたときに言うの。


 『好き』ってね。


 それが私の描く恋愛像。


 ・・・でも違った」