「中庭と体育館って隣だろ?何でこんなに遠いんだよー。」


脱力した声で凛が文句を吐いた。


「そういう事も考えて学校を選ばないからだ」


「誰が敷地面積考慮して学校選ぶかよ」


彼も輝好同様、この学校に受かっているのだから頭脳においては問題ないはずなのだが、凛はどこか短絡的なところがある。


物事を深く考えない。


だからこそ、今の輝好についていけるのだが。


二人は階段を上り、館内へ入った。


扉を開くと、中にはバスケットコートが四面、テニスコーートが二面設けられていた。


2階席まである体育館は大きいという言葉も陳腐に聞こえる。


普段は並べられていないパイプ椅子が、今日のためにびっしりと整頓されていた。


二人は指定された席に腰を落ち着かせると、凛は物珍しそうに辺りを見回した。


同じクラスで出席番号も近い彼らの座席は、もちろん隣同士だった。


少し来るのが早かったのか、生徒の姿は数えるほどしか見えない。


「なぁなぁ」


凛が斜め後ろを向いたまま、輝好の茶色の袖を引っ張った。


「何だ?」


「何かあいつ、ずっと俺らのこと見てんだけど」