ピストルの音が鳴り響くと同時に輝好は走り出した。


紙が置いてあるテーブルまで、50m。


輝好は一番早くたどり着くと、真ん中にある紙を手に取り、すばやく開いた。


『カチューシャをしている女性』


幸い、先程記憶した観客の中にカチューシャをしている人がいた。


その人のところまで、全力で輝好は走った。


「悪いが、一緒に来てもらっていいか?」


同じ年ぐらいの女の子が、にこりと微笑んだ。


「いいですよ!」


輝好は彼女の全力疾走のペースに合わせた。


それでも、余裕の1位で借り物競争は幕を閉じた。