辺りには誰も居ない。


「さっさと見て、さっさと帰るぞ」


乗り気でない輝好は一人足早に進んだ。


それに二人がついていく形となった。


今年有名なった桜だけあって、そこら中に案内の立て札があった。


それに従って進んでいると、一つの洞窟の前に辿り着いた。


案内板によればこの中にあるそうだが・・・


「なぁ、桜って光なしで育つのか?」


もっともな意見を述べる凛。


中を覗き込むと、辺りは真っ暗で光が通っている気配はなかった。


案内板をよく見ると、「入るときは懐中電灯を持参して下さい」との注意書きが。


それを見た秋覇が肩にかけていたバックから懐中電灯を取り出した。


「用意がいいんだな」


「何となく、持ってった方がいいかなーって。俺の勘は大抵当たるよ」


三人は秋覇を先頭に歩き出した。


中は足場が悪く、凹凸がある。


観光といっても年寄りは無理だな、とここにいる誰もがそう思った。