意外な夢に輝好は驚いた。


というのも、今までカメラを手にした秋覇を見たことがなかったからだ。


「小さい頃から空が好きでさ、世界中の空を撮りたいんだよなぁー。もちろん空以外もとるけど」


「秋覇君のお父さんは何をしているんだい?」


ずっと気になっていたことを健吾が聞いた。


「うちの学校の理事長!」


またもや意外な新事実が発覚。


輝好は入学式のことを思い出した。


なぜ秋覇が屋上の鍵を複製できたのか。


ここにきて分かった。


全ては父親が根元だった。


父親が理事長であれば、秋覇が学校のシステムについて詳しいのも頷ける。


「母親はホテルの経営してて、姉さんに継がせる気マンマンなんだよねー」


夢のない人にとっては内定が決まっているようなものだが、夢のある人には迷惑でしかない。


秋覇は後者なのだ。


「姉さんはイタアリア料理人になりたいんだって。だから本場で学ぶため家出してたんだ」


「親に夢のことは言ったのか?」


秋覇は輝好の問いかけに力なく首を縦に振った。


「でも、聞く耳持たなくって。俺はそんな親が嫌で逃げてきたんだ」


大分酔いが醒めたのか、口調はいつも通りに戻っていた。


「俺だって分かってるんだ。心の底では夢はしょせん夢だって」