三十分後、鷹須賀家の人々は目の前に起きている現実に愕然としていた。


「ほんと、人生やってらんねぇって!」


思いのほか、秋覇が酒に弱かったらしく、普段からは想像もつかない程人格が変わってしまった。


怒り上戸?


今もなお酒を飲もうとする秋覇を止めようと、グラスを取り上げるが傍にあった缶を掴み、直接飲み始めた。


「やめろ、秋覇」


秋覇が置いたチューハイの缶を輝好が持ち上げると、中身は空だった。


「輝好はいいよな~」


残っていた酒は健吾と由実により戸棚へとなおされ、飲むものがなくなった秋覇は、代わりに用意された水を一気に飲み干した。


「こんな楽しい日、俺の人生で初めてだ!」


三人は秋覇の言葉に引っかかりを感じ、真剣な面持ちで話を聞いた。


「輝好は、将来の夢ってある?」


「いや、特に」


輝好が思ったことを素直に言うと、秋覇は今度は健吾と由実に目を移した。


「おじさん、おばさんは、もし輝好が芸能人になりたいって言ったらどうする?」


二人はどうするとかよりも、まず想像がつかなかった。


困惑顔の二人に気づいた秋覇は質問を変えた。


「応援する?しない?」


二択に絞られたので、二人は同時に答えた。


「「する」」


「ほら~、いいよなぁ。俺なんて親父の跡継ぎ決定だし」


ぶぅっと、秋覇は頬を膨らませた。


「秋覇は夢があるのか?」


輝好の問いかけに、待ってましたといわんばかりに口を開いた。


「カメラマン!!」