「………杏♪」


「莢乃…。」


つかつかとあたしに一歩ずつ近寄る莢乃。


そして、手の届くくらいの距離に莢乃は立った。


「昨日は一方的に電話切っちゃってごめんね?あたしからかけたのに…。」


「あっ……全然いいよ?」


「そ…♪?ありがとっ♪」


「ってか莢乃…、凛桜戻らなくていいの…?」


「大丈夫だよ♪桜冠にいたって言えば♪」


「そっか。ならいいんだ♪」


「うん♪……ねぇ杏。」


「ん…?」


「あたしね、ホントはピアノ習ってないの♪」


「えぇっ!?」


「でもね♪?そのかわり昨日、大翔の元カノとして、杏の友達として、あたしができることはやったから♪」


「え……?」


「まぁ決めるのは杏だけどね♪じゃあまたね、杏♪」


莢乃は手をヒラヒラさせながら屋上を出た。