「杏、次の授業数Ⅰだよ。そろそろ戻らないと怒られるよー!?」


「んーちょっと待って。今メールしてるから…」


「ヤバッ!!チャイム鳴った!!早くしないと寺脇と紀ノ川さんの質問責めに遭うよ!!」


「待ってよ帆乃香ー!!」


帆乃香(ほのか)はあたしの幼なじみ。


もちろん、あたしの本名を知る数少ない人物。


寺脇ってのは数学教師で、紀ノ川さんは学級委員長。


2人とも時間にルーズな人が嫌いで、ちょっとでも授業に遅れたらいちいち理由を問い詰めてくる。


あたしそういうキッチリしすぎる人って、正直苦手なんだよねー…。


「ふぅ…、ギリギリ間に合ったー!!」


あたしと帆乃香は席に着く。


隣の席の男子があたしに話しかけてきた。


本名を知る数少ない人物でもあり、幼なじみの達也(たつや)だった。


「お前ホント屋上好きだな。そんで遅刻寸前かよ!!」


「いいじゃん好きなんだから!!」


達也が腹を抱えてゲラゲラ笑っている。


達也はこう見えて、やる時はやるイイ奴なんだよなー…。