"風戸くんを見てカッコいいとしか思わない"


こんなの…。


こんなの嘘だよ…。


嘘に決まってんじゃん…。


風戸くんを見るたび、


"あたしだけに振り向いてほしい"


って思うもん…。


知ってるよ…?


これが"恋"なんだってことくらい…。


でも、みんなに嘘ついてまで言えないのは…、


やっぱり過去があるから…。


イジメが本格化したのは小学校高学年からだけど…。


それまでにイジメが全くないわけじゃなかった…。


1人だけ……。


1人だけ幼稚園と小学校低学年のときも、名前を理由にしてイジメる男子がいた。


小2でパッタリいなくなっちゃったから、その人の名前まで覚えてないけど…。


あ、"いなくなっちゃった"ってのは、確か転校だったかな?


でも……。


"女なのに自分と名前が一緒だから"っていう理由だったってことは、今でも鮮明に覚えてる…。


きっと、どんなに塗り固めた嘘でも、結局いつかはバレるんだ…。


それがバレて、みんなが離れていくのが怖いだけ…。


隠してない状態でも酷いイジメだったんだから…。


隠しててバレた状態のほうが、イジメは絶対酷いに決まってる…!!


「…杏?どうしたの?そんなにボーっとして。」


「あっ…帆乃香…。」


帆乃香は幼稚園の頃から優しくて、面倒見が良くて、あたしのことも理解してくれた。


「あっ、次教室移動じゃない!?確か理科の実験!!」


玲花が隣にいた愛梨に向かって尋ねる。


「ホントだ!!ヤバい!!急ごっ!!」


愛梨は急いでお弁当を片付ける。


そして、4人全員全速力で教室に戻った。