彼は一瞬ちょっと目を丸くしてから、



「まー見てのとおり、“追っかけ”ってやつかなー?」



テーブルの上に置いてあったチョコを口に放り込みながら、
けろっと答える。



「“追っかけ”?‥あなたのファンってこと?」



「うん?まぁ、ファンの人もいたかもしれないけど‥」


「物珍しさで、追いかけてきた人もいると思うよ?」


どーぞ、とわたしにも、
チョコをひとつ渡しながら、
もぐもぐと口を動かしている。



チョコの包みを開けながら、
頭の中を整理する。



浮かんできた答えはひとつ―。



やっぱり、彼は有名人―



だということ。



でも、どうやって聞けばいい?


テレビをめったに見ないわたし。
芸能情報には、ほんとに疎いんだ。



あなたのこと知りません、なんてゆったから失礼だよね?



嘘でも気づいたふりしてみる?




どーしよ、どーしよー!



「くすっ」



彼の笑い声で、ぱっと顔をあげる。



「君って、ほんと可愛いね!」



くすくす笑いながら、



「考えてることが、顔に書いてある!」



わたしを指さす。



ばっと反射的に顔を手で隠す。



「あはは!」



ツボに入ったのか、ソファーでお腹を抱え、ひっくり返ってしまった。