特に行きたい所も無くて、というか、地元のくせに地理を知らないから行き先は言えなかった。



「夜景でも見に行こうか。まだ2月だし、空気が澄んでるから綺麗に見えるよ?」


僕は、うんと言って、連れて行ってもらう事にした。


夜景なんて、テレビとか、写真でしか見た事がない。
わくわくしながら、千尋さんの話しに相槌をうっていた。



「楽しそうだね。良かった。夜景すきなの?それともドライブがすき?」



千尋さんは前を見ながら、笑顔で言った。


「夜景、見た事ない。っていうか、仕事以外であんまり家から出ないから、地理も知らないし。ドライブもそれらしいものはした事ない…でも、今すっごく楽しい。」



僕は思った事を伝えた。
千尋さんとの約束。

言いたい事や、思った事は言う。


さすがに「千尋さんとだから」とは言えなかったけど…




千尋さんは、少し寂しそうな顔をした後で、
「楽しいなら良かった。俺もすごい楽しい!行った事がない所も、俺が連れてってあげるから。言ってね。」


優しい。

それ以外の言葉があるだろうか?