僕は煙草を吸い終わったから、家を出た。
5時くらいには帰って来よう。
親父に怒られるから…
それと、これも返そう、と千尋さんに貰った5万円を持って家を出た。
やっぱりお金なんてもらえない。
貰うほどの事はして無いし、そんな価値もない。
朝より活気の減った商店街を抜けて、駅に向かう。
そこには、ほんの数時間前に乗った黒いピカピカの高級車があった。
中にはついさっきまで電話してた彼。
その彼に向けて車の助手席側の窓をノックした。
すぐにドアを開けてくれて、僕は車に乗った。
「早かったね?」
「100kmで来た」
語尾に“(笑)”を想像できるくらい、彼はおどけて言った。
「捕まっちゃえば、よかったのに」
僕も語尾に“(笑)”がつくのを想像できるように笑って言った。
自然に笑えた気がした。