僕も布団から出て着替える。
こんなみっともない格好、したくない。
今度は、ちゃんと自分に合ったサイズの服を見に纏った。
声はまだ聞こえるけど、さほど気にならなくなった。
千尋さんのおかげ…かな?
そして、ホテルで洗われたから堕ちてしまった目の下のコンシーラーも直した。
これは目の下の隈(くま)を隠すため。
これをしないとすごくやつれて見えて、近所で「虐待されてる」とか。「病気の子」と騒がれた事があったから、親父が買ってきて、出かけるときは付けるように言われてる。
千尋さんは20分くらいで着くって言ってたから、煙草を吸ってから家を出る事にした。
話し声が無くなって、この部屋に静寂が戻った。
そうすると、やっぱり嫌でも聞こえる隣の声。
百合子さん。
普段の百合子さんしか、僕は知りたくない。
隣に居る百合子さんは、奥が知ってる百合子さんじゃない。
ふーっっと煙を吐いて、一服。