「ん…。」


千尋さんの声は優しくて、あんな態度とったのに変わってなかった。



『どうしたの?!なんかあった?!』


僕の声を聞いて、千尋さんは焦ったように言った。

「…っ。」


何を言ったらいいのか、分からなかった。

この状況を説明できる冷静さは、今の僕には無い。


『今、どこに居る?』

「っ…いえ。」


声を振り絞って答える。

ごめんなさい…


『泣かないで?大丈夫。俺、行こうか?まだホテルに居るんだけど…飛んでくから。』

千尋さんの声は、やっぱり落ち着く。


泣かないで。の言葉に、僕の涙は落ち着きを見せてきた。


「ごめんなさい…こわい…」



他に言わなきゃいけない事があるのに。

本当はお金も返したいのに。


『あ、すぐかけ直すよ!』