彼はまた、哀しそうだ。
彼の膝の上で、後ろから抱き締められてるから表情は分からないけど、たぶん当たってると思う。

この人は、僕が泣いたら一緒に泣いてくれるのだろうか?
僕が哀しかったら、一緒に堕ちてくれるのだろうか?


まだ会って一時間くらいしか経ってない。
外は全然明るいし、車や電車、人の声で騒がしい。
今はお昼すぎくらいだろう。



「ねぇ、キスしたくなっちゃった」

「え?」


泣きそうな、かすれた声で彼が言った。
なんでそんな声をしているの?
哀しいの?…なぜ?

「こっち、向いて」

僕は僕の頭の上に置かれた彼の顔を斜め上に見上げた。


……触れるだけの短いキス。



お互い下着姿だし、事が始まってもおかしくない状況だった。

でも、今からシたら
お金はもらえるのかな?
この人には、たくさん良くしてもらったから絶対欲しいわけじゃないけど…


「ねぇ、もう一回。」


僕は何も言わないで彼と向き合って座り直し、さっきより長いキスをした。