顔の擦り傷についていた砂を流す為に、シャワーは顔に当てられていたから、涙が出た事に彼は気付いていないと思う。




僕はふと鏡をみた。

熱めのシャワーから出る湯気で曇っていたから、あんまりよく見えなかったけど
さっきまで色の薄かった痣は濃さを増していて、腫れてる。


僕はひどく滑稽だ。

お化けみたい…




そう思った。


それを何故か彼に見せたくなくて、目を隠そうとした。

それすらも彼は「だめ。腫れてるから、冷やさないと。触っちゃだめ。触ったら痛いよ?」と優しく言った。


僕は「ん。」とだけ言って、泣いた時の独特な鼻声になっている事に気付いた。





この人は、どこまで僕の事を想ってくれるのか、知りたくなった。



それを確かめる術も知らないのに…