「あの、どこまで行くんですか?僕、あんまり遅いと怒られちゃうから駅から近いホテルの方が…」

終電を逃して、始発で帰った時の親父は怖い。
どんなに痛々しい傷を作って帰ってきても、わざとそこを狙う様にして殴る。
今日のは、すごく分かりやすいから、遅くなって殴られるのは嫌だ。

第一、午前中の時点で達成されてないが、
僕は今日僕を休ませてあげる予定だった。



「ホテル?ホテルに行きたいの?」

「え…?」


彼はきょとんとして、それからは何も言葉にしないで車を駅の方にUターンして、今来た道を戻った。





結局着いたのはホテルだったが、来た事のない
見上げるだけだった高級ホテル。

良く行くラブホテルなんかとは、比べる事が失礼なくらいの差。


僕と彼はとことん違う、という事を思い知らされた。


フロントは、顔を隠す為の板なんか無く
綺麗で清楚なお姉さん2人がにこやかに接客をしている。

薄暗い照明こそ、同じ感じもするが
いやらしい感じは全くなく、シックな照明だった。