あまり早く回転する事の出来ない頭を、一生懸命動かして
やっと出た持論を、おばあさんに話そうとしたら
降りる駅に着いてしまった。


「んじゃ、また会うかもしれないね。」


そう言っておばあさんは、僕よりはやく駅から出ていった。

「もう会わないと思うけど…」

もうおばあさんは居ないのに、僕はぽつんと呟いた。






僕も人の流れにそって駅を出て、どこに行こうか悩んだ。

ふと親父の顔が頭に浮かんで、こう言った。
「出かけてるなら、金かせいで来いよ。」

親父は僕には行くところが此処しかない事を知っている。
僕は地元と此処しか、地理を知らない。


友人もいないし、やらなければいけない事も1つしか知らない。



「どこに行こうかな?」



とりあえずはどこに行こうと暇だから、と
いつも行くホテル街に足を向けた。

そこに行けば声をかけてくるオヤジが、
時間と金を持て余して、人を探している。