「無理せんでないよ。私はもう次で降りるから、座りなさい。」
「本当?おばあちゃん、その切符。僕と降りる駅が同じだよ?」
「あ…」
この人の目に僕はどう映っているのだろう…。
もし僕が普通の人で、僕みたいなおかしな奴がボロボロの姿で立っていても
きっと、話かけようとも、優しくしてやろうとも思わない。
「大丈夫だよ。立ってるから。」
どうして僕に優しくしてくれるのかな?
全く知らない赤の他人の、しかも傷だらけで変な格好の
人目見て狂っている、と分かる様な僕に。
普通の人は、僕に関わりたがらない。
僕と会話して、同じ時間を過ごすのは
性欲を満たしたがっている、僕と同じ汚いオヤジ達だけだ。
「…何か、あったのかい?疲れてる顔してる。」
この人は、疲れてない僕の顔を知ってるのであろうか?
なぜ分かってしまうんだろうか?
「おばあちゃんには、関係ないよ。」
僕は、こんな心の優しい人が僕なんかの心配をしてくれている事が
悪い事の様な気がして、大丈夫、平気、何もないよ、と繰り返した。
おばあさんは、私じゃ力になれないの、と
少しおちこんでしまったけど
これでいいと思う。
僕に関わらない方がいい。