先ほど開けたばかりの薬の瓶は、突き飛ばされた時に割れてしまって
公園に置いてきた。

まだ半分以上も残っていたペットボトルの水も、いつの間にか無くしてしまった。


僕はホームでまた水を買って、今朝よりも多めの薬を胃に流した。



電車が来て、電車には結構な人が座っていて
仕方なく立っていると、
目の前に座っていたおばあさんが立ち上がった。

「良かったら、座るかい?」


そう言ってきた腰の曲がったおばあさんは、僕を憐れんだような眼で見ていた。


こんなおばあさんにまで気を使われるほど、僕は貧弱に見えているのか?

「大丈夫だよ、おばあちゃん。平気。」


僕は17の僕がおばあさんに席を譲ってもらうのもおかしい話だ、と思い断った。
本当は体中が痛くて座りたかったけど、これは僕のやせ我慢。
見たところ80歳後半くらいのおばあさんに席を譲ってもらってしまったら、僕はどこまで惨めになってしまうだろう。



「本当かい?大丈夫には見えんけどねぇ…」

「平気平気。」


心配してくれるおばあさんに、僕は笑ってみせた。


笑う、なんて久しくしていなくて
笑った事が無いんじゃないか、ってくらいヘタクソな笑い方だったと思う。

それでもおばあさんは、何も触れてこなかった。