それから千尋さんは少し黙って、何かを考えるような顔をすると突然頭を掻き毟った。
そのいきなりの行為に、ビクっとしう僕。


「あーもうっ!格好良いセリフとか、女が喜ぶ言葉とか、全然分かんねーし!」

そんな事、考えてたの…?


「そんなの、求めてないから…。千尋さんの言葉で伝えてよ。」


これは、僕の正直な気持ち。
心の中で言ったのか、言葉にしたのか分かんないけど。
千尋さんには伝わった、のかな?





「全然綺麗な言葉じゃねーけど。ゆーきの事、すっげえすき!なんかよく分かんないけど全部すき!どうしようもないくらいすき!強がりなところとか、何でも1人で解決しようとするとことか、自分ばっかり責めちゃうとことか、気に入らないけど俺に頼ろうとしないとことか、壊れそうなくらい華奢で理想のその身体も、俺が映ってるその眼も、一生懸命おれの為になんかしてくれてる顔も、天然なとこも、無防備な寝顔も、怖いくらい良く出来たその性格も、笑った顔も、泣いた顔も、困った顔も、怒った顔も、強い部分も、弱い部分もぜーーーんぶ!すきすぎてたまらない…。」


途中から出てきた僕の涙を、千尋さんはパーカーの袖を引っ張って吹きながら続けた。


「泣き虫。」

いたずらっぽく笑って、僕を見る千尋さんはびっくりするくらい格好良くて、見惚れてしまった。


「ぐすっ…うっさい…っ」


「ほら、そういうとこ。」



千尋さんはまた真剣な顔に戻って言った。