僕が千尋さんの事を考えてると、店長はすぐに気付く。

怒られるわけじゃないけど、やっぱり申し訳ない気持ちになって仕事に集中する。
本の発注の為にパソコンをいじる。

店長と画面をのぞきながら、相談する。


最近は、ケータイ小説が流行ってるみたいで新しいものが毎週たくさん入ってくる。
有名な作家の小説や、何かを伝える為の写真集はあまり売れない。

本が好きな店長は、「本の用途が変わってきてしまった」と哀しそうだ。


言葉はだんだん軽くなってきてる。
きっともっと世界が進んで発展すれば、『昔の人って字を打つのに、手を使ってたんだ。不便だね』なんて言われる時代がやってきてしまうんだろう。

一文字一言に意味を付けて書いた言葉やお話なんて、紙くずになってしまうんだ。
未来には“紙”なんて無いかもしれない…



そんな次元を超えた先のハナシをしたらキリがないけど、店長の気持ちも分かる気がする…。




僕と千尋さんが滅多に口にしない“すき”や“愛してる”の言葉の重みはどのくらいだろう…?




と何かにつけて千尋さんの事につながってしまう。

僕は千尋さんに生きてるみたいだ…