「千尋が君を選んだ理由がやっと分かったよ。君はそこら辺の女の子たちより綺麗だね。」
ドラマでしか聞いた事の無い様なセリフを真顔で吐くお父さんに、むずむずするようなくすぐったい気分になった。
千尋さんも顔を真っ赤にして「そういう事言うなよ」とお父さんを睨んでいた。
千尋さんのお母さんも、顔を赤くしている。
「いいじゃないか、本当の事だ」と言うお父さんに、みんなで笑った。
堅い話は抜きにして、お食事を楽しまなきゃ。とお母さんが言って、前回の重い空気なんて感じられないほどに楽しんだ。
家族って、こんなに仲がいいものなんだ…
僕の記憶の中には、こんなに素晴らしい光景は残ってない。
そうなったわけじゃないのに、本当の家族になったみたいに嬉しかった。
いつか本当に…
本当の家族になれたらいいなぁ…?
僕のお父さんとタツヤと百合子さんと、千尋さんのお父さんとお母さんと、一緒にこうしてご飯食べに行きたいなぁ。
なんて勝手に妄想を繰り広げて、その日は終わった。