僕は椅子に座り直して、口を開いた。


「お会いするの、お待たせしてしまってごめんなさい。」



千尋さんのお父さんは、この前見る事が出来なかった笑顔で「良いんだよ。この間は、すまなかったね。」と言った。

千尋さんのお母さんも、優しい顔で笑ってる。

目、笑うとなくなる…
千尋さんにそっくりだなぁ。


「千尋から聞いたよ。色々大変だったようだね。事情は深く知らないが、君は強い子だね。」



強い、なんて初めて言われた…
涙がでそうになった。


千尋さんのお父さんは、家の事情も知らないのにあんな言い方をしてしまって本当に申し訳ないと思ってる、と何度も頭を下げて誤ってくれた。

確かに僕は、他人からにたら出来の悪い子だと思う。


でもそれは、弱くて何もかもから逃げていた自分のせい…

もう“何も分かってくれない”なんて嘆く事はしない。



僕がしてきた事は、誰にも理解されないような事だったから。




僕は深々と頭を下げる千尋さんのお父さんに、いたたまれない気持ちになった。