朝起きて、弁当を作って、千尋さんを起こして、ネクタイを結んで、キスをして、支度をして、家を出る。
仕事が終わって、千尋さんが迎えに来て、一緒に買い物をして、一緒にご飯を作って、一緒にご飯を食べて、寝る。
それを6回繰り返したら、千尋さんのお父さんに会う約束の日になった。
今度は大丈夫、と自分に言い聞かせる。
良い思い出ではない、あのレストラン。
あの日と同じ席。
ひとつだけ違うのは、入口を向いて座ってる事。
前回は、背中を向けて座ってた。
今度は違う。
千尋さんのお父さんとお母さんが入ってくる方に向かって座ってる。
もう、背中は見せない。
何にでも立ち向かうと決めた。
僕は“頑張る”って決めたんだ…。
約束の時間ぴったりに、千尋さんのご両親が来た。
僕は席を立って、頭を下げた。
「久しぶり、だね。」
お父さんは僕を座るように言って、自分も椅子に座りながらそう言った。