やっと、ひとりになれた。
かばんの中から買ったばかりの香水を出して、振りまいた。
部屋中、千尋さんの匂い…
千尋さんが近くに居るような気がする。
気のせいという事は分かっているけど。
それと、大量に買い占めた市販の風邪薬。
ひとつ開けて、手のひらにざらざらと出して水で流し込む。
この行為に意味なんてない。
ただの依存にしかすぎない。
明日は、ずっと音沙汰なしのままだった本屋に行く事にした。
1人で暮らす、と決めたからには働かないわけにもいかない。
もうクビだろうけど、誤りにさえ行ければいい。
また雇ってもらうなんて思わない。
僕はそこまでおこがましい人間なんかじゃないから。
誰かに助けてもらえるなんて、これっぽっちも思っていない。
その日も、やっぱり眠れなくてそのまま本屋に行った。
まだ開店前の9時半。
僕が出勤してた時間だ。
裏口から入って、挨拶をした。
「お、おはようございます…」
ばっと勢い良く振り向いた店長にびっくりした。
「優ちゃん?!」
店長は目をまるくしてこちらを見た。