アパートの部屋の手続きは、すぐに済ませてくれた。
今日は百合子さんに連れてきてもらって、生活用品の買い出しに来ている。
家具を見たけどあまり要らなくて、ソファーベットと冷蔵庫、服と洗濯機と小さいタンスだけ買った。
ワンルームだからそんなに家具は置けないし。
デパートを階をひとつひとつ見て回っていると、香水売り場に目が止まった。
他に種類はたくさんあるのに、ひとつだけ光ってみえる香水…ブルガリブラック。
千尋さんの匂いだ…
気付けばそれを買っていた自分に驚く。
千尋さんの事を考えない日は無かった。
まいにち来てくれてる千尋さん。
階段を駆け下りて玄関にいけば、10秒足らずで会える距離なのに、僕はそこに行こうとした事はない。
会えばきっと、だめになってしまう。
まだすきだから…。
買い物が済んで、新しい家に向かった。
今日から此処で生活する。
毎週2日置きに父さんが点滴をしに来てくれるのが条件だ。
僕は荷物を運ぶのを手伝ってくれた百合子さんにお礼を言った。
百合子さんはずっと心配してくれていたけど、僕の顔をじっくりと見て帰った。