だから、殴られても仕方ないと思った。

でも違ったんだ。


親父が僕に見せたのは、ベットの横に置いてある台の引き出しの中身。



僕が本屋で働いた金が入っていた。

「お前の金だ。」


ちゃんと働いて貰った毎月の給料から、2万円だけ引いた全部の給料。
時給が良いわけじゃないけど、月の半分以上も朝から夕方まで働きっぱなしなら10万とちょっとは稼いでいた。

引き出しの中には丸裸のそのお金だけがそのまま入っていた。


「なんで?」



これは母さんの使ったカードの返済のためのお金…

どうして…此処にあるの…?



「もう、金は渡さなくていい。今まで、すまなかった。」




またひとつ、涙が頬を伝った。


別人のような父。

これまで何度憎んだだろう…
こんな父を、僕は知らなかった。


ずっと嫌われてると思っていた親父に頭を下げられた。



予想だにしない父の行動に、ただ立ち尽くすしかない僕。