いつものように千尋さんを起こして2回分の“行ってきます”のキスをして千尋さんを見送った。
いつも僕より一足先に会社に向かう千尋さん。
僕はその後に洗濯と洗いもの、覚えたての化粧をして家を出る。
主婦って楽しいんだ、と思った。
だいすきな人のために動く事は、決して褒められなくてもめんどくさい事じゃない。
千尋さんは僕がやってる事を当たり前だなんて思っていないはずだし、いつもありがとうと言って頭を撫でてくれる。
休みの日には何も言わずに手伝ってくれる。
僕もそれを当たり前なんて思ってない。
僕もいつもの様にTシャツにジーパンという動きやすい格好をして、千尋さんからの初めてのプレゼントの白いワンピースとミュールを持って家を出た。
バイトが終わったら千尋さんと本屋の前で待ち合わせをしてある。
もうワンピース一枚でも可笑しくない季節になった。
ずいぶん一緒に居る気がするけど、まだ4カ月しか経ってないんだなぁ。
そんな事を思いながらバイトに向かった。
セミの鳴き声が聞こえて、いつもは何とも思わないのに今日はなんだかイライラする。
千尋さんのお父さん…
どんな人なんだろう……
千尋さんのお父さんだから、きっと怖い人じゃない気がする。
僕の事、どんな風に思うかな…?
人からの印象なんて、気にした事もなかった…
僕はどんな風に思われるんだろう…