「そこなら近いし、いいよ。帰ったら電話してみるんだね」
千尋さんの顔からはさっきの拗ねた表情は無くなって、またいつもの笑顔に戻った。
千尋さんと居ると、時間が経つのが早い…
あっと言う間に食事を終えて、千尋さんの昼休みがもうすぐ終わってしまう。
「それじゃあ、5時半には帰れるから。」
と千尋さんと解散した。
僕は家に帰って洗濯物を取りこんだ。
綺麗に丁寧に畳んで、千尋さんの服はタンスにしまった。
僕の服は、荷物が入ってるかばんに戻した。
昨日千尋さんが着ていたワイシャツにアイロンをかけた。
千尋さん、今まで全部自分でやってたんだ…
男の人なのに、偉いなぁ
僕はワイシャツをハンガーにかけてクローゼットの中にしまった。
それから本屋さんに電話をする事にした。
『はい、さくら書店です。』
電話に出たのは、優しそうなおばさんだった。
「あの、求人誌を見てお電話させて頂きました、片平です。」
大嫌いだった、千尋さんにも教えてない僕の名字。
でもこの前の親父だったら、この名字も悪くないかも、なんて思ってしまう。